友達の友達の冬休みが、1日短くなった話
地元の友達の友達が、カフェで働いていた。
30代独身男性オーナー(通称店長)が数年前にオープンした、白い漆喰と黄色い屋根、赤い木の扉に空色の窓枠という、絵本に出てきそうなそのお店には、
ゆるくホイップされた生クリームが高評価の
「ゆるふわショートケーキ」や、
田んぼに植えてあるれんげ狙いのミツバチから、農家のおじさんが土手に仕掛けた趣味の巣箱で搾り取ったはちみつを使った
「オーガニックはちみつの太陽プリン」、
冬はベタ雪に封じ込められ生協の宅配も断られそうになった地元有数の山の中にある、脱サラ観光牧場の牛の乳を使った
「春待ちまったりミルクの淡雪ラテ」
など、
かわいくて見栄えもよく、甘すぎないお菓子がたくさんならんでおり、
駐車場も広く、
この町有数のおしゃれスポットだった。
その店で、年末に大掃除をすることになった。
普段あまり開けない掃除道具入れの上の天袋みたいなところを開けたところ、
黒いゴミ袋に包まれた、アスファルトの破片的なものが入ったペットボトルが複数でてきたそうだ。
ややあって
「いやいやいや、わたしじゃない、わたしじゃないからね」
と聞かれてもないのに声をあげたのは、最年長のパートさん。
パーマのかかったロングの茶髪を、ピンクの丸ゴムで結んだポニーテール、
スキニージーンズがよく似合う
「酒焼けして頬のすこしげっそりした八代亜紀」のような元美人。
(世代として、本人的には「ファッションリーダーは工藤静香」なのかもしれません。)
特に同店での彼女の素行不良のヒストリーがあったわけではないが、
ほかのメンバーが
1)丸々と越えたオーナ(通称店長)
2)インテリアの専門学校を卒業後、市役所の臨時職員、イオンモール内のアパレル店員、このケーキ屋を転々としている実家リア充の友達の友達
3)週4回カーブスに通い60代にして体脂肪率がもうすぐ20%を切るというオーナーのお母さん
というメンバーなので、なんとなく消去法でそういう雰囲気になっただけのこと。
しかし
「いやいや、一緒に働く仲間じゃないか、そんなこと考えるもんじゃない」
とみんなが思い直したそばから、自分から否定してくれたので、
「ひとこともそんなこといってないのに、あやしいじゃないか」
と、みんなで堂々と攻めることができたそう。
でも彼女は「いやいやいや、ソッチ系だけはしたら離婚だから。お父さんと約束してるから。絶対わたしソッチ系じゃないから」
と、しきりに否定するばかり。
どうしようもないので、警察を呼んだところ、指紋も出てこず、参考人として皆事情聴取されたところ、とくにこれといった情報もなく、
なによりペットボトルに入ったアスファルト片なので事件性もなく、
警察もめんどくさそうで、そのままになってしまったらしい。
友達の友達は「そのせいで今年は冬休みが1日短くなって超むかついた!」とカウントダウンイベントの花火を極寒の中で待ちながらプリプリ思い出し怒りをしていたそうだ。
というのを、昔、友達から電話で聞いたなあ、というはなしでした。