「びわ食べ道」の話
小学校の通学路に、立派な琵琶の木があった。
一緒に登下校していたKちゃんと、その道を「びわ食べ道」と呼んで、初夏にその木に実がなるのを楽しみにしていた。
ちょうど「となりのトトロ」が公開した頃で、私もKちゃんも気持ちはさつきちゃん。
自然ゆたかなところで、古い家並みと年寄りに囲まれ、かなりいい線いっているなと思っていた。
なので、ある日全校集会で校長先生が「琵琶食ってるやつは誰だ!」と全校児童に呼び掛けたときは驚愕したものだ。
その木は、人の家の庭に生えているものだった。
私とKちゃんは、山のへりみたいな、半分竹藪みたいなけもの道を登下校に使っていたが、そこは残りの半分が人の家の敷地だったのだ。
風薫る初夏の頃、琵琶の実はとってくれといわんばかりにふっさふさになっていたので、
下校途中に琵琶の手前にあるフェンスをよじ登り、
琵琶の実に手が届くようにとフェンスの上でつま先立ちで立ち上がり、
ばりばりもいで、
むしゃむしゃ食べて、
食べかすをよその庭に散らかして帰っていた。
とんだ「となりのトトロ」だった。
でも、気分を壊された私たちは憤慨していたように思う。